問題と課題(2)

前回の記事では「問題」と「課題」の違いをAs-is/To-beモデルを使って説明しました。シンプルなモデルなので、詳細な解説はあまり見かけないのですが、エラーを起こしやすい点もあるので解説を加えます。後半では「問題」と「課題」を分けて考えることのメリットについてまとめます。

4 As-is/To-beモデルの注意点

問題定義、課題設定のためにAs-is/To-beモデルを使うときには、以下のような点に気をつけなければなりません。

4.1 順序を守る

検討の順序は以下のとおりです。

  • As-is、To-beの両方を書き起こす。
  • 問題を定義する。
  • 問題を評価する(後述)。
  • 課題を設定する。

よくあるミスですが、頭に浮かんでいる問題や課題を説明するために、As-is/To-beモデルを使うことがあります。

例えば、Instagramを毎週代理投稿してくれるサービスを知ったとします。そのサービスの導入という課題を前提にしてしまうと、「まあ、たしかに週一くらいは必要かな」というようにTo-beの設定が正しくないものになってしまうおそれがあります。

As-isとTo-beの検討順序は、基本的にはTo-beが最初です。現状から考えると、本来目指すべきラインより無難な目標となってしまいがちだからです。ただ、関連する多くの内容を扱う場合には、As-is先行のほうが重要な問題の発見につながることもあります。

4.2 適切なスコープにする。

スコープとはどの範囲でAs-is/To-beを捉えるかです。今までの例ではInstagramに関連して「投稿頻度」という具体性の高い(狭い範囲の)スコープで捉えていました。問題を「Instagramによる集客がうまくいかない」という抽象性の高い(広い範囲の)スコープで捉えたらどうなるでしょうか。

投稿頻度の問題もあるでしょうが、文章表現、写真の使い方、タグの付け方なども考えなければならないかもしれません。このようにスコープが広くなると、問題から課題を見つける前に問題を分解して考えることが必要になります。しかし、本当に解決しなければいけないことが、タグの工夫かもしれないことを考えると、投稿頻度の改善は意味がないことになるため、スコープを広げる必要があります。適切な範囲までスコープを広げてみて、分解された問題の中から、解決すべき問題がどれかを探っていくわけです。

一方、スコープが広くなりすぎると(例:儲かってない)分解に手間がかかり、問題解決にたどり着かないこともあります。

スコープ拡大(上位As-is/To-beの検討)では、そもそもなんのための問題なのかを考える。大きな問題を小さく分解して、影響力の大きい問題にスコープを集中して考える。
As-is_To-be スコープ

最初の問題定義がしっくり来なかったら、そもそもなんのための問題なのかを考えるためにスコープを拡大し、大きな問題から発見した小さな問題にピンときたらそこに集中するという感覚でいいでしょう。

4.3 本当の問題を探る。

順序を守らない、スコープが適切でないなどの他にも、個人的な感情が邪魔をして問題発見がうまくいかないことがあります。「かっこよくありたい」という感情です。

課題=改善方法が流行りの手法だったり、得意なジャンルだったりすると、どうしてもその課題に結びつく問題を重要視しがちです。また、中心的な問題の原因が自分にあることに気づいたときにも、他の問題を探してしまうことがあるものです。

自分の感情にはなかなか気づかないものです。理性的に考えているつもりで、この様なミスを侵さないように、問題の重要性に順序を付けるときには、個人的な感情が入っていないか、慎重に考える必要があります。

5 問題と課題を分けるメリット

さて、このように面倒な手順を踏んで問題と課題を分ける必要があるのはなぜか。それは「課題の明確化」「問題の評価」を行うことができ、結果的に効率性が上がるからです。

5.1 課題の明確化

1つの問題を解決するための方法(課題)にはいくつかの選択肢があることが普通だと書きました。そして、正しく問題解決するためには、考えられる課題を並べて、その中から適切なものを選ぶという手順が欠かせません。

問題と課題を分けて考えないで闇雲に解決策に手をつける場合、効果の出にくい解決方法を選択してしまうことがあります。

また、仕事に関係者がいる場合、問題と課題の関係を共有することで、どうしてその作業が必要なのかが明確にすることができます。意味の分からない作業は遅れたり、想定外の事態に適切な対処ができなかったりするものです。意味・着地点を理解してもらえないような場合、正しく課題設定ができているかもう一度点検した方が良いかもしれません。

5.2 問題の評価

スコープを上げて問題を捉えた場合、細かい問題に分けてみるということも書きました。並んだ問題を見て、「この問題が解決したら上位の問題にどう影響するか」を考えます。問題の難易度もありますが、基本的には上位の問題に及ぼす影響が大きい問題を取り上げるのが鉄則です。これにより、報われない無駄な仕事を減らすことができます。

問題と課題を分けて考えるって、随分面倒だと感じたでしょうか。しかし、慣れればわずかな時間で考えることができるようになります。走り出す前に、少し時間を使って目的地とコースを確認することに損はないはずです。

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