きれいごとの事業

小島よしおさんのSDGs動画を巡って

少し前ですが、杉並区議のツイッター投稿が、話題になりました。
芸人の小島よしおさんがyoutubeで上げた動画をからかっている内容のようです。

「・・ようです」と書いたのは、私には意味がわからないからです。

小島よしおさんの動画は、アルプス一万尺のメロディーに乗せて、SDGsの17の目標を歌って(踊って)いる内容です。その動画のtwitter告知のスクリーン画像を貼り付けて、区議は次のようにコメントしています。

「小島よしおさんは、SDGsでお金を稼いでいるわけですね。 なるほど。 これは。。。 簡単な答え合わせですね。」(文末にはネズミの絵文字が2つ)

どうでしょう、皆さんは意味がわかりますか?

小島よしおさんの動画
区議のツイート

「簡単な答え合わせ」というのは、これが意味すること(答え)は深く考えなくてもわかるという意味なのでしょうが、私には区議のいう答えも、ツイートの意味もわかりません。

ただ、小島よしおさん、あるいはSDGsでお金を稼ぐことへの悪意があるのだろうなということは感じることができます。

区議が小島よしおさんに、何かの私怨を持ち続けていたのかもしれませんが、大人の社会人、それもある程度の発信力を自認しているであろう人が、私怨をこのような形で公開するのは、問題です。

もし、「SDGsでお金を稼ぐこと」に悪意があるのだとしたら、より大きな問題だといえます。「いいことは、見返りを求めない気持ちでやらなければならない」と思っているのであれば、申し訳ないですが、脳内お花畑としか言いようがありません。いかがなものでしょうか。

価値があるのは「いいこと」であり、気持ちは関係ありません。また、SDGsは世界で推進を進める課題であり、道徳的なテーマではないのです。

やはり杉様、きっぷがいい!

俳優の「杉様」こと杉良太郎さんは、刑務所の慰問、被災地の支援などで私財をつぎ込んで、また時間も労力も使って、大きな貢献をされています。あるとき、「偽善や売名行為と言われることはないか」という質問をされた杉良太郎さんはこう答えたそうです。

「ええ、そうです。偽善で売名行為ですよ。すでに数十億円使ってます。皆さんもやられたらどうですか。」(後半は諸説あり)きっぷがいいというのは、こういう言葉や人の為のものなのでしょう。

「杉様 売名」「杉良太郎 売名」で検索するといろいろな記事が見られます。ぜひご覧ください

もちろん、ほとんどの人にはそのような財産があるわけではなく、真似などできるわけがありません。そんな私達にできることの1つが、事業を通しての社会貢献です。

私の創業をテーマした講義のなかでは、事業のテーマの見つけ方として3つの切り口があると説明しています。

  • 自分が得意なこと・持っている資源を活かす。
  • 自分がやりたいことで誰かの役に立つことを探す。
  • 社会の問題、みんなが困っていることの解決策を事業にする。

最初の2つは自分軸なので考えることは容易ですが、もっとも大きな価値を提供し、需要が見込まれるのは3つ目の考え方ではないでしょうか。

みんなの困りごとを解決する=「いいこと」はビジネスになるのです。そして、ビジネスになるからこそ民間が問題解決を持続的に続けられるのです。

空気が止まった修士論文審査会

以前、修士論文の審査をしていたときにこんな事がありました。私は最終決定権のないサブの立場で参加しており、ある学生から発表されたのはこんなビジネスプランでした。(その大学院ではビジネスプランを修士論文として認めています。)

その年に起こった熊本豪雨では、多くの住民が倒壊した自宅から避難所に身を寄せるしかありませんでした。全国から支援物資が送られ、県や市が倉庫として確保したスペースに溢れかえりました。しかし、災害対応に慣れていなかった自治体職員はそれを管理することができず、被災者には必要なものが必要なときに届かず、またニーズのあるものが倉庫の奥で眠ったまま使われないという事態が発生しました。

このビジネスは、自治体に支援物資の需給を管理するシステムを提供するというものでした。特殊な薬や衛生用品を必要とする住民の所在の確認、全国の支援者に要請したい品目のネットでの情報開示、倉庫でのスペース管理・出入庫管理などを考慮しており、私には素晴らしいものに見えました。

ところが、学生の発表が終わるやいなや、ある指導教授がこういったのです。

「君は被災者を食いものにするつもりか」

一瞬空気が止まったように感じました。発表者や私だけでなく、次の発表の順番を待つ学生も、その教室にいる発言した教授をのぞく全員が、言葉を失ったはずです。(と信じたいです)
被災者の役に立とうとするビジネスが、なぜ被災者を食い物にすることになるのでしょうか。

おそらく、そこから「カネを稼ぐ」ということが、教授の趣味には合わなかったのでしょう。料金は自治体から収集するビジネスであること、それにより対応作業を効率化でき支払うメリットが有ると考えた自治体が利用するという説明はしっかりされていたはずなのですが。

「きれいごと」「いいこと」だからこそ事業として進めよう

「いいこと」をより価値のあるもの、持続性のあるものにするには事業者の力が大きく役立つときがあります。「カネ稼ぎ」が汚いものという単純な発想はどうか捨ててほしいと思います。

そして、事業を考える人達には、ぜひ自信をもって「きれいごと」を追求してほしいと思います。

「陰徳」という言葉があります。人に見えないところで善行をすることが尊いという意味でつかわれることがありますが、実はこの言葉も「陰徳あれば陽報あり」という格言の一部で、報いを期待するものです。すでに十分に高い名声をほんのちょっと高めるために何十億を社会貢献に使うようなことのできない私達が、事業を通じて「いいこと」を行い適正な対価を得ることに、なんの後ろめたいことがあるでしょうか。
それぞれができる能力を発揮して困りごとを解決していきましょう。そして、それが一瞬で終わることなく続けられるようにするために、利益を確保していきましょう。

区議のプロフィールを調べると、卒業後すぐに政治の世界にはいっています。穿った推測をすれば事業はカネを稼ぐ汚いもの、政治は補助金や条例で金を使い福祉を充実するきれいなものと思っているのかもしれません。(政治の原資を考えると切ないです)

また、LGBT関係についてもいろいろ噛み付いているのですが、①小島よしおさんとの私怨、②いいことで稼ぐことへの嫌悪感以外の第3の可能性のSDGsそのものへの否定的な感情については、想像したくないので、ここでは触れません。

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