ビジネスにおける「問題」と「課題」について考えてみようと思います。もし、あなたが学生だとしたら、「課題」は期限までに提出するひとまとまりの指示のことで、「問題」はそのなかの具体的な質問の文章と理解していることでしょう。
ところがビジネスの世界では、この2つの言葉は全く違う意味で使われているのです。学校では課題も問題も与えられるものですが、ビジネスの世界では与えられないことも多いのです。(課題は与えられることがありますが、問題は多くの場合発見しなければいけないものとなります。)
問題を発見し、課題を設定して、解決する。これが仕事です。「仕事」と「作業」という言葉の意味の違いから始めましょう。
1 問題解決が仕事
私は仕事と作業ということばを次のように分けて使っています。
- 仕事:問題の発見・定義・評価、解決策の検討・実施、問題状態の変化の確認までのプロセス全体。
- 作業:仕事を進める中で必要となる業務、問題の存在を前提としない業務。
作業は手を動かす具体的なタスクであり、問題解決のための一連のプロセス(タスクの集合)が仕事です。そして、仕事のなかで最も大事なのが、問題を正確に発見して、正しく定義(言葉にすること)なのです。
私独自の考えではなく、多くの人が使っている考え方のはずです。もっとも、すべてのビジネスマンがこのように言葉を使い分けているわけではなく、問題と課題についても混同されている場合が少なくありません。しかし、この2つを別のものとして捉えることには大きな価値があります。
2 問題とはなにか
As-is/To-beモデルを使って問題と課題について考えていきましょう。As-is/To-beモデルは下の図のように表現されます。まず、あるべき姿(To-be)を明確にします。それに対して現状の状態が(As-is)です。As-isとTo-beの差(あるべき姿になっていない部分)が問題となります。
例えば、目指すべき姿(To-be)がInstagramで毎週投稿している状態とし、現状(As-is)は4週に1回投稿しているのであれば、問題はその差である「4週のうち3週では投稿できていないこと」あるいは「投稿回数が少ないこと」と定義することができます。
3 課題とはなにか
問題がAs-isとTo-beの差を表すのに対し、課題はAs-isの状態からTo-beの状態になるためにやらなければいけないことを表します。先程の図では矢印が双方向でしたが、課題を表す次の図では矢印が一方向になっています。
図では課題A,BのどちらかひとつでもクリアすればTo-beの状態になることがわかります。
Cについてはc1,c2,c3の3つの小タスクをクリアする必要があります。課題によっては、同時並行で複数の作業をしなければならないこともあるでしょうし、あるいは、d1が完了したらd2を終えて初めてDが完了というような課題もあるでしょう。
このように1つの問題を解決するための方法(課題)にはいくつかの選択肢があることが普通です。ここで先程の問題定義に戻ってみると、「投稿回数が少ないこと」と「4週のうち3週では投稿できていないこと」では、違う解決策=課題が出てきそうです。毎月第1週だけ投稿しているとしたら、2~4週目に担当者が投稿できない理由を検討する必要がありますが、「発信回数が少ないこと」という問題定義をしていたらその視点は生まれません。課題設定をしたあとにも問題定義をもう一度見直すことには意味がありそうです。
ここまで、As-is/To-beモデルを使って問題と課題の違いについて考えてきました。
引き続き次回 問題と課題(2)では、As-is/To-beモデルを使う上での注意点、問題と課題を分けて考えることのメリットについて考えていきます。
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