ある会議の話です。人物も内容も架空のものですが、既視感アリアリの会議ではないでしょうか。
舞台は毎月行われる営業進捗会議で、参加者は営業部メンバーと営業畑出身の桐畑常務です。売上状況について各担当から報告があり、部長からの指示と、ときどき常務からのコメントがあります。続いて会議の後半では、前回までに設定された個別テーマについての議論が行われます。
議事録の確認営業部の田中部長が議長として口を開きます。
田中 「それでは、今日のテーマに入ります。前回に引き続き『営業方法の改善』について、吉住くんから発表してください。」
部長のPCからスクリーンに映し出されていた今回の議事内容の中段には「営業方法の改善(吉住)」と書かれています。
吉住 「はい、それではまず、現在の営業フローについてまとめた資料をお手元にお配りします。」
配り終えた吉住さんは、プロジェクターのコードを自分のPCに繋ぎ変えて、説明を始めます。
吉住 「現在の・・・・この段階で、必要とするスペックについて要望シートへの記入を先方にお願いしておりますが、項目によってはわかりにくいものや、不要だと考えられるものあると考えられるため、この機会に見直す必要があると考えます。」
田中 「うん」
吉住 「不要な項目については減らすとか、よりわかりやすくするということです。」
田中 「うん」
吉住 「いかがでしょうか。」
田中 「・・・だから、どこをどう減らすのか言ってくれないと提案にならないじゃないか。どこが不要だと思うんだい?」
吉住 「あ、えーと、例えば9番の今後予想されるスペックの変化についてですが、ほとんどの顧客は記入が難しいとしていて・・」
桐畑 「この項目は、全社的な戦略見直しの議論を行ったときに、提案型営業に結びつけるために必要な項目として追加されたものなんだ。意見を言うことは構わないが、経緯を踏まえて考える必要があるんじゃないかな。」
しばらく議論が続きますが、他の参加者の発言もあまりなく、字句の訂正以外については、吉住さんの提案は受け入れられません。やがて・・
田中 「そもそも今回は、顧客のグループ分け基準の見直しについての発表のはずだったのに、なぜ要望シートの話なのかな。」
内容については、架空の話なので取り上げませんが、会議の進め方を見て、どのように感じたでしょうか。
吉住さんの萎縮する様子に着目した方もいるでしょう。穏やかな口調ですが実質的には厳しく叱責されています。上席者はもう少しポジティブなメッセージを、という考え方もあるかもしれません。しかし、この議事進行で最大の問題は、テーマの設定つまり議題の目的設定がきちんとなされていない点です。
最後の発言から、田中部長と吉住さんのテーマ設定が異なっていたことが明らかになります。なぜこんなエラーが起こったのかはわかりませんが、原因は吉住さんだけではなく、田中部長を含んだ会議出席者全員にあります。その結果、吉住さんの準備時間、会議参加者の時間が無駄に失われたというわけです。
会議は大量の時間を消費します。それを無駄にしないためにはしっかりとした目的設定が欠かせません。前半の「進捗状況の把握と指示のための会議」については、改めて記事にするつもりですが、後半のような変えようとする会議では、何が問題だから変える必要があるのかという論点からはじめて、目的を設定する必要があります。
会議の進め方。会議の活かし方。会議の減らし方。一緒に考えさせてください。
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